【寄稿】他社に遅れを取るな!SharePoint Online/Box を導入せよ!これで、情報のごみ箱化は対策できるのか。

【執筆】溝上卓也 ( TK業務企画 /代表)
コラム
データ整理

DXは流行り言葉なのか、トップの方針で、社内に“Office365 (Teams, SharePoint Online, OneDrive)”を導入したとか、”Box“を導入したという話を耳にするようになりました。新型コロナウィルス (COVID-19) 感染対策で、テレワーク環境を整えるために、Office365やBoxなどを文書・情報共有ツールとして導入した結果であろうと想像します。

新型コロナウィルス前までは、文書・情報のごみ箱化したファイルサーバ対策が重要視されていましたが、今や忘れられてしまいました。本稿では、何故多くの会社で、ファイルサーバが、文書・情報のごみ箱と化したのかについて、根本的な原因を説明します。果たして、“Office365”、”Box“の導入だけで、情報のごみ箱化は防げるのでしょうか。

1.ファイルサーバの整理をどのようにやっていますか。

 これまでは、ファイルサーバの容量に制限があることもあり、組織(部門・チーム)のメンバーは、ファイルサーバの整理に協力的に取り組んできました。
具体的には、図1に示しますような方法です。①フォルダ階層を深くしない、②わかりやすいフォルダ名・ファイル名を付ける、③容量の限界に近付いたら、メンバー総出で、不要ファイルを削除する、などといった方法です。

図1 進むファイルサーバの情報ごみ箱化

しかしながら、このような人海戦術にも限界があり、不要ファイルの削除が進まないことから、年々ファイルサーバの容量は増加し、検索性は下がっています。不要ファイルの削除が進展しない主な理由は、①ファイル毎に削除するので手間取る②古いファイルの要否がわからない、などが挙げられます。
 このような状況になった組織を支援すべく、長期に参照・更新のないファイルを削除候補とするツールも多く販売されております。ある程度の効果はあるのですが、ファイル1個1個について要否判断をするため、このようなツールの導入だけでは、ファイルサーバが、文書・情報のごみ箱になることを防ぎきれませんでした。

2.混ぜるな 危険! 大分類はこの観点で

文書・情報の分類はどうしても個別業務を中心に考えてしまいますが、実は、基本となる6つの分類があります。 分類の異なる分類の文書・情報を混ぜると後で整理ができない、削除ができないことに繋がってしまうのです。さらに大きく分けると「記録として残すべきもの」と「残す必要のないもの」です。
 これらの分類について、図2を用いて順に説明していきます。

図2 文書・情報の大分類

(1) 「掲示、常用」
・周知や告知等のために使用します。残すという考え方の対象ではありません。
・ファイルサーバ内では、誰でもが参照しやすいところに配置する必要があります。

(2) 「個人のワーク【属人的】」
・組織(部門)で正式に認めている文書・情報ではなく、正式文書作成のためのワークエリア的な意味合いです。
・残すべきものではありません。
・この分類の文書・情報を他の分類に含めると一番整理・削除がやっかいになります。
・他にワークエリアを提供する手段があれば、必ずしも用意する必要はありません。

(3) 「組織の記録とするか迷い中」
・新たに出てきた課題などに対応します。「記録として残すべきもの」と「残す必要のないもの」の中間に位置します。
・一定期間内に、組織として「記録として残す」のか、その保管期間をどうするかの結論を出す必要があります。
・1年以内に判断することを目標とし、判断に少なくとも2年以上はかけないようにするといいでしょう。
・2年以上放置したものは削除すると強い姿勢で臨まないと不要ファイルが残っていく可能性があります。

(4) 「組織の記録(保管期間有、永年を含む)」
・組織(部門)として、正式にと「記録として残すべき」と定めた文書・情報です。
・1年以上の保管期限を有するものとします。
・組織の記録とする際に、文書・情報毎に予め保管期間を定めます。

(5) 「組織の一時記録」
・「記録として残すべきもの」であり、文書・情報の受け渡しや、自部門の処理に対する関連部署からの問い合わせ応答のために一時的(1年以内)の保管を行います。
・保管期間は、削除工数、削除頻度などを勘案しますが、長くても1期(半年)というところです。

(6) 「プロジェクト記録」
・「記録として残すべきもの」であり、プロジェクトの開始から終了まで記録し、プロジェクトの終了時に重要度により保管期間を決定します。

3. 大分類を「保存期間」観点から見ると

図2の大分類を「保管期間」の観点から見るとそれぞれ別の性質を持つことがわかります。これを以下に、説明します。保管期間の性質が異なるファイルを一つのフォルダに入れたとします。そうすると、ファイルを削除したい場合には、(1)各ファイルがどの分類のものかということを判断してから、(2)保管期間の判断をした後、削除可否の判断を行うことになります。
したがって、大分類が異なるファイルを混ぜると、削除の判断に手間取るようになります。

図3 文書・情報の大分類と保存期間の関係

(1) 「掲示、常用」
・保管期限はありません。常に最新のものを使用します。
・過去分が必要な場合は、④組織の記録に残していく等を検討します。

(2) 「個人のワーク【属人的】」
・最大保有して、登録から1年以内とする。これと、同時に、一人あたりの割付容量を定めます。

(3) 「組織の記録とするか迷い中」
・保存期間は最大2年間程度

(4) 「組織の記録(保管期間有、永年を含む)」
・文書種別毎に保存期間を定めます。

(5) 「組織の一時記録」
・保存期間は長くても半年

(6) 「プロジェクト記録」
・プロジェクトの開始から終了まで記録し、プロジェクトの終了時に重要度により保管期間を決定します。

4.文書・情報に保存期間を設定することが必要

もう一つ重要なのは、文書・情報に予め保存期間を設定しておくことです。当たり前のことですが、数年前の文書・情報について、整理・削除の段になって保存期間を考えることは現実的ではありません。
先の大分類でいえば、(1)掲示・常用、(2)個人のワーク、(3)組織の記録にするかどうか迷い中、(5)組織の一時記録ついては、最大での保存期間は、1~2年であり、大分類毎にフォルダ分けしておけば、やみくもに増加することはありません。
後は、(4)組織の記録に対しては、文書・情報毎に、保存期間を付与し、(6)プロジェクト記録に対しては、プロジェクト毎に、保存期間を付与して行きます。 そうすれば、(4),(6)については、保存期間に到達した順に、削除していけばよいので、保存期間の過ぎたファイルが増え過ぎるということがなくなります。
こうすることで、図4に示すように、ファイルサーバのごみ箱化を止めることができます。しかし、これは、自動的にできるのではなく、組織の知恵、マネジメント、メンバーの作業が必要です。

図4 ごみ箱化は止められる

5.Office365/Box等のITツールの導入だけでは解決しません

文書・情報のごみ箱化を避けるためには、上記2の分類,4の保存期間の設定が必要です。しかしながら、“Office365(Teams, SharePoint Online, OneDrive) / Box”等のITツールは上記2,4を自動的に解決する手段が備わっているわけではありません。
したがって、文書・情報のごみ箱化を避けるためには、組織の知恵、マネジメントでの対応は引き続き必要です。しかし、ITツールの機能によっては、メンバー作業の省力化はできるのかも知れません。

6. まとめ

 “Office365/Box“ を導入した組織も、それだけでは組織の文書・情報が、ごみ箱化することから逃れることは、できません。情報資産管理マガジンでは、解決のヒントとなる記事も掲載して行きますので着目お願いします。

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