【第2回】業務マニュアルを整備して、事務作業のテレワーク化を進めよう。現状の作業方法の調査 ~今使っている業務マニュアルの収集~

コラム
テレワーク

本シリーズでは、事務作業のテレワーク化について、その進め方について取り上げて行きます。 「第1回 はじめに」では、段階的な取組みについてご紹介しました。今回は、その中でも初期段階の中の「現状(ASIS)の業務マニュアル」の収集について説明します。

1.自部門の業務の全てを把握できていますか。

職場の業務責任者の皆さん、
「自部門の業務とその処理手順を全て把握できていますか。」

業務を遂行している職場の担当者の皆さん、
「全ての業務を職場で定めたルールで進めていますか。」

このような質問をした場合に、本音のところでは、大抵、次のような回答になっていると思います。

 業務責任者の方は、「主要な2,3の業務については、ルールを徹底しているつもりだ。だだ、補助的業務については、ルールが徹底できていないだけでなく、全体像が掴めず、担当者の方に任せてしまっていることがあるかも知れない」。
一方、担当者の皆さんは、「基本的な手順は業務マニュアルに決めた通りだが、これまで、個別事情があり都度対応してきたことや、そもそも業務マニュアルもなく、これまでの経験を活かしてやっている業務もあるな。」

2.今使っている業務マニュアルの収集

現状の作業方法の調査の第一歩は、各担当者全員から、今使っている業務マニュアルを収集することです。ここでいう業務マニュアルは手順にまで展開してあるもので、それを見て、業務を遂行できるものを指しています。

いろいろなやり方はあると思いますが、Excelシートを使った業務マニュアルの情報収集について、説明します。 尚、業務マニュアルは、ファイルサーバーにある前提です。

表1は、業務マニュアル情報収集シートの例です。

表1 業務マニュアル情報収集シート

(1)項目は、“項番“、“分類”、“業務種別”、“業務管理者記入欄”と“担当者記入欄”に分かれます。
“業務管理者記入欄”には、業務管理者が、職場の正式な“業務マニュアルの名とバージョン”、ファイルが置かれているファイルサーバーの上の“フォルダー位置(フォルダーパス)“を記入します。

(2)業務管理者には、自身が認識している“分類”、“業務種別”、“業務管理者記入欄”を記入して、各担当者に情報収集シートを配布します。

表2 業務管理者記入例

(3)担当者は自分が処理している業務について、”担当者名“担当者記入欄” を記入します。
もし、実際にやっている業務が、配布されたシートに記載がない場合は、業務自体も追加し、情報を記入します。

表3 担当者記入例

主な留意点は、以下の2点です。

(1) 業務マニュアル名称の記載の揺れや、バージョンに違いがあることを前提に、ファイルサーバーに置かれているそのままの名称やバージョンを記入すること。

(2) これは1次調査で、まだ、後続の調査も行いますので、記入には時間を掛け過ぎず「3日間以内に回答のこと」等、時間を区切ります。

3.やってみてわかること

業務マニュアル情報の収集を行うことで、次のようなことがわかります。

(1)業務責任者記入時点での判明事項

業務責任者が、この調査シートを作成した時点で、業務責任者は職場の業務マニュアルの整備状況を理解できる筈です。さて、どうでしたでしょうか。

・よく管理された職場では、既に、業務の種別はリスト化され、業務マニュアルは、ファイルサーバーの1箇所に集められ、バージョン管理もされているに違いありません。

・管理が不十分な職場では、業務の種別は主業務しかリスト化されておらず、業務マニュアルは、散在し、どれが最新版かもわかりづらい状況にあります。

(2)業務マニュアル収集シート回収時での判明事項例

業務責任者が、指示していると思っている業務マニュアルとは別のマニュアルを担当者が見ていることがあります。

また、業務責任者が把握していない業務をやっていることがあります。 原因・対策はいろいろあると思いますが、後報で検討したいと思います。

表4 判明事項例

4.情報資産管理からのポイント

業務マニュアルの管理の仕方について、情報資産管理の観点からポイントを数点助言致します。

4.1 管理

(1) 業務マニュアルを集中して管理するフォルダー(業務マニュアル管理フォルダー)を作成します。

[利点]
・組織として正式なマニュアルであることが明確になる。
・一覧性が、高まるので、業務管理者は、管理度合いを見える化できる。
・担当者が探しやすい。

(2) 業務マニュアルのファイル名には、追番とバージョンも記載し、業務マニュアル登録台帳も作成する。 例えば、追番+バージョン+業務マニュアル名をファイル名称とする。

[利点]
・マニュアル名称に揺れがあっても対象のマニュアルを一意に特定できる。
・マニュアルを改訂した場合も、最新版などとせず、一意に特定連絡できる。

(3) 業務マニュアル管理フォルダーの職場内の一般メンバーのアクセス権は「読み取り専用」のみとする。
更新した業務マニュアルの登録を行う人にだけ、変更権限を付与します。
業務マニュアル更新時は、必ずバージョンをあげ、前バージョンは残す。

理由)意図しない削除、変更を避けるため。

尚、より厳密に業務マニュアルを守るには、更新した業務マニュアルの登録を行う人には、変更権限ではなく、WORM(ライトワンス:Write Once Read Manyの略)の権限を与えることが望ましいです。

4.2 活用

(1)業務マニュアルの原稿はWord,Excel,PowerPointで記述するとして、業務マニュアルとして公開する場合、元のファイル形式で公開するか、PDFとするか。担当者の活用を考えた場合、元のファイル形式で公開することが望ましいと考えます。

理由)個々の担当者は、自分が作業ミスをしないためのコメントや、作業を理解するための補足事項を自分用の業務マニュアルに書き込みたいケースがあります。しかしながら、PDFにしてしまうと追加コメントの記入には特別なツールを追加購入する必要があるためです。

(2)業務マニュアルの原稿をWord,Excel,PowerPoint 形式とした場合は、「読み取り専用」に設定します。

 

理由)ファイルを意図しない変更から守ることができます。

5.まとめ

 「現状(ASIS)の業務マニュアル」の収集について説明しました。この作業を行うだけでも、職場の業務マニュアルの整備状況の見える化に役立ちます。FACT FINDINGが、大切です。

 

さあ、担当者が今使っている業務マニュアルを集めましょう。

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