新型コロナウイルス襲来 情報リテラシー強化と情報の透明性で、パニックを防ごう

コラム
ライフ

 新型コロナウイルスの脅威は、日本にも大打撃を与えました。多くのイベントが中止、延期になったり、全国の小・中・高等学校・特別支援学校が臨時休校になったりと、日本人の普段の生活に大きな影響を与えています。こういった中、人々にさらなる混乱を招いたのが、“デマ情報”です。
 そもそも「デマ」とは、「根拠のない、いい加減な噂話のこと※1」や「意図的、扇動的なうその情報※2 」のこと。「扇動」「扇動政治」を意味するドイツ語の「デマゴギー(Demagogie)」が由来しており、人々の行動を煽ったり、何らかの行動を起こさせる意味合いがあります。
 今回のデマ騒動では、SNS等で「次はトイレットペーパーが品薄になる」との情報が流れ、トイレットペーパーを買い占める人が続出。日本中のスーパーやドラッグストアからトイレットペーパーが姿を消しました。
 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。このような”デマ”に流されないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、デマの原因と対策を検討していきます。

※1語源由来辞典


※2「コトバ解説」毎日新聞 2012/4/23

1.昔から、"デマ"は存在する

 いつの時代にも、「情報」は不可欠な要素。歴史的にみても、情報を上手く活用できるかどうかで、有利な立場になるかどうかが左右された例は多くあります。例えば、皆さんもご存知の通り「トロイの木馬」。トロイアとの戦争で、ギリシア人が流した”デマ情報”をトロイア人が信じてしまった結果、トロイアは10年にもわたったその戦争に敗北しました。そのデマ情報とは「ギリシア人が作ったこの木馬は、和平の贈物だ」との情報。その木馬の中にはギリシア人の兵士たちが隠れていたにも関わらず、嘘の情報を信じたトロイア人は城門を開けその木馬を入れてしまいました。その結果、トロイアは一晩で陥落したと言われています※3

 この「トロイの木馬」の話では、情報の真偽を確かめることの重要性が分かります。

 また、日本の歴史の中では、織田信長の桶狭間の戦いが例に挙げられます。相手の今川義元は2万5千もの勢を抱えていたにも関わらず、わずか2千ほどの勢しかなかった織田信長が勝利しました。その決め手は何だったのでしょうか。それは「情報の活用」です。信長は普段から“情報”を重視していたとのこと。この戦いでも、情報を得るためスパイを送りこませ、今川義元の居場所を把握し、そこに兵を絞って集中攻撃させ、見事勝利したということです※4

 ここからは、正しい情報を入手することの重要性が分かります。

それから何百年もの時が経った今でも、情報に惑わされる事態が発生しています。

1973年オイルショック
トイレットペーパーは普通に流通していたのにも関わらず、ちょっとした噂を発端に不安感からデマが流れ、全国で買い占め騒動が発生しました※5

2011年3月11日に発生した東日本大震災
「筑波大学の連絡で約一時間後には茨城にも放射能が来る※6」や「放射線対策にイソジン・ワカメが良い※7」といった様々なデマが流れ、さらに「外国人による犯罪が横行している」というデマを信じた人が8割以上もいたという調査も発表されています※8

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震
「大規模な断水が始まる」などの誤った情報や、再度大地震が来るようなことを促す「地響きが鳴ってるそうなので、大きい地震が来る可能性が高い」との嘘の情報が流れたりしました※9

 デマで社会が混乱したことは、このように過去にも多発しておりました。今回の新型コロナウイルス関連でもデマが流れ、その情報に惑わされた結果、社会的な混乱を招きました。デマは、繰り返されているのです。
 また現代は、情報収集の多くがSNSとなっているように、新聞やテレビからネット中心の時代となったことで、デマが拡散しやすくなる傾向があります。その一方で、それを打ち消すジャーナリズムが弱くなってきていることも、デマの拡散を助長しています。
 では、どうすればデマ騒動は抑えられるのでしょうか。ここで重要となるのは、情報を入手する側(以下、受け手側)の「情報リテラシーの強化」と「過去から学ぶ姿勢」、そして発信側の「情報の透明性」です。

※3「トロイア戦争」ハイパー世界史用語集 世界史の窓


※4「桶狭間の戦い「信長、5つの勝因」は何だったか」東洋経済オンライン 2017/10/28


※5「オイルショックに学ぶ、デマ拡散でトイレットペーパー買い占めが起こる集団心理とは」EnjoyLife 最終更新日2020/3/2


※6「福島原子力発電所の事故に係る対応について」筑波大学ホームページ 2011/03/15


※7「放射能被曝に海藻が効くという情報について」レファレンス事例詳細 レファレンス共同データベース 最終更新日2018/03/08


※8「東日本大震災直後 略奪、暴徒化…「外国人犯罪が横行」とデマ拡散「信じた」人86%にも 東北学院大教授が調査」産経新聞 2017.1.17


※9「北海道地震、SNSでデマ拡散 専門家「発信元確認を」」日本経済新聞 2018/9/11

2.情報リテラシーの強化

 自分が正しい判断をし行動するためには、情報リテラシーの能力が不可欠です。そもそも”情報リテラシー”とは、「自らの目的を達するために適切に情報を活用することができる基礎的な知識や技能。情報の探索や取得、評価や分析、整理や編集、作成や発信などを行う能力の総体※10」のこと。
 ここで、受け手側にとって特に大事なのは、「情報の真偽を確認する力」です。
 そのためには、

 ●発信元を確かめる
 「どこの誰のブログにあった話なのか」「誰が発言した内容か?公的機関か?」「情報発信者の過
 去の発信情報を調べる」
 ●いつの情報かを確かめる
 「この情報は何月何日付の何新聞の記事から引用したのか」
 ●第一次情報、第二次情報についても確認
 「オリジナルの情報を探す」「一次情報を加工・編集した情報を確認」
 ●記事の比較
 「同じ内容の記事を読んで比較する」

 現代は特に、SNSを使って個人でも気軽に情報を発信できるため、発信される情報の質は多種多様です。自分に必要な情報、信頼できる情報を得るためには、内容の信憑性を主体的に判断する姿勢が必要です。情報が溢れる今の時代、情報は取捨選択すべきもの。普段から「情報の真偽を確認する」習慣をつけておきましょう。

※10「情報リテラシー【information literacy】」IT用語辞典 最終更新日2018/11/15

3.過去から学ぶ姿勢

 上記のように、情報リテラシーの強化も必要ですが、過去から学ぶ姿勢、も重要となります。上記1で上げた通り、過去何度もデマ騒動が繰り返されているにもかかわらず、人々はそれを忘れたかのようにまた繰り返します。
 では、どうすれば過去の経験を伝え、共有することができるでしょうか。
 残念ながら、何もしなければ人の経験は失われていきます。したがって、経験した人が伝えようという意識をもち、何かに残すとういう行動を起こし、そしてそれを受け継ぐ人も共有しようという意識を持つように努力しなければなりません。災害時には、デマ情報が流れやすい、という意識を持つだけで、行動が少し、変わってくるはずです。

4.情報の透明性が必須

 人々がデマに惑わされないためには、正しい情報を発信することも必要です。そうすることで人々も安心し、正しい行動をとるようになります。
 今回の新型コロナウルイスで正しい情報を積極的に配信したことにより、混乱を回避することができた例があります。新型コロナウイルスの流行でマスク不足になった台湾で、IT担当大臣がとった行動が「神対応」である、と話題になりました。天才プログラマーと言われているIT担当大臣オードリー・タン氏がとった対応は以下の通りです。
 「台湾のエンジニアたちが自由に開発できるよう、台湾中の各薬局のマスク在庫状況のデータを公開、これを数日というほんのわずかな時間で成し遂げ、実際に公開されたのが、台湾のエンジニアたちがボランティアで作成した「マスク在庫マップ」です。台湾中の薬局情報がマップ上に表示され、三角形のアイコンをクリックすると、現時点での成人用マスクと子ども用マスクの在庫数が表示される仕組み※11」とのこと。
 このように情報の透明性を確保することで、マスクを求めて薬局を探し回ることもなくなりますし、在庫がなく落胆することも、さらにはマスクの在庫がないことでお客さんと店員とのもめごともなくなり、店員のストレスも解消されます。
 一方、日本における新型コロナウイルスのマスク不足はなかなか解消されません。2020年2月12日の官房長官の会見では、「例年以上の毎週1億枚以上が供給できる見通し※12」 と発表されておりましたが、供給されたマスクはどこにいっているのでしょうか。情報公開のないまま、どこの店頭でもみかけないままですと、国民からの信頼も失いかねません。
 必要な情報を公開し、情報の透明性を確保することで、信頼性の確保にもつながります。

   情報を発信する側にとっては、上記のように情報の透明性が必要ですが、そのためには適切な情報の活用、共有が必要です。すなわち、情報(データ)を正確に記録し、保存し、利用していくことが重要です。現在は、「ビッグデータ」という言葉をよく聞きますが、整理できないほどの情報の激増も危惧されています。しかし、これを悲観するのではなく、その膨大な情報を的確に解析、分析して活用することが重要です。様々な現象を正確に記録しているデータを解析できれば、新しい事実を発見することができ、その情報を活用できます。そしてその情報を発信することで、情報の透明性が確保されます。上記の例では、多大なるデータがある中で、今必要なデータとして国中のマスクの在庫データを活用し、そのデータを良い手段で公開(=共有)したことで、社会の混乱を回避できました。
 リアルタイムでデータを取得し活用することで、速やかに対策を取れる体制にしておくことが重要です。

※11「トランスジェンダーである台湾の天才IT大臣が新型肺炎で「神対応」」OUT JAPAN 2020/02/24

※12「マスク「今週には毎週1億枚以上の供給確保」官房長官」NHK NEWS WEB 2020/02/21

まとめ

 災害など、社会が混乱しているときには尚更、一人一人の判断と行動が重要になります。正しい判断をするためには、デマ情報に惑わされず、正しい情報をもとに行動すべきです。そのためには、情報を取得する側は「情報の真偽を確認する力」が必要ですし、「過去から学ぶ姿勢」が大事です。そして発信側は「情報の透明性の確保」が重要で、そのためには適切に情報を活用し、共有することが大事です。
 改めて自身の情報の扱い方を見直してみませんか。一人一人の意識で、デマ騒動を防ぐことがでるはずです。

関連記事

  • 【寄稿】3.11の悔しい思い 強い組織は被災や失敗の記録を伝承・保全する

    コラム

  • 新型コロナウイルス襲来 ついに本格テレワーク時代に突入~必要な備えはできていますか?緊急対策提案~

    コラム

  • 広がっていく“衛星データ”の利活用。その時に重要となるのは?(前編)

    インタビュー記事