【後編】地震だけが、災害じゃない!持続可能な社会を実現させるための対策は?

コラム
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 前編では、BCP(事業継続計画)策定の前提となる「それぞれの災害」に関して、どのような被害が起こりうるのかを確認しました。
 では、実際にどのようなBCPが必要なのか、後編では、その内容について検討するうえで大切なことは何かを考えます。

 【前編からの続き】

2.事業を継続するために検討すべき3つのこと~社会的機能を維持するために~

 自然災害によって想定される被害は異なります。それでは、どうやって被害を減らす、あるいはその後の対策を立てていくべきかみていきましょう。

(1)立地の検討

 事業を行うには、オフィスや工場の立地から検討しなければなりません。例えば、水害を考慮すると、海岸や河川の近くは妥当か、土砂崩れでは山の斜面に近いか、などです。国や自治体が公表しているハザードマップなどを参考にすると良いでしょう。ちなみに2019年10月の台風19号において、NHKが浸水エリアを分析した結果、自治体のハザードマップで想定されていたエリアとその多くが一致していたということが分かったそうです。
 また、二次被害の想定も重要です。危険物を取り扱っている施設が周囲にないかどうか、今後、建物を建てる際はそういったハザードマップや、地域の地形、道路、周辺の施設などを考慮し、立地を検討することが必要です。日本全国、何らかの災害のリスクはあります。自分たちがどのような場所にいるのかを再確認し、リスクに向き合うことが必要です。
 なお、重要データを運用・管理する場所については、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)のDMCガイドライン特定非営利活動法人日本データセンター協会の基準を参考にするのもよいでしょう。

(2)組織での対策

 まず地震に対しては、棚などの転倒防止をする、耐震補強をする、重量の大きいサーバやハードディスクを大量に搭載している機器は、破損軽減のために下に配置するなどのほか、書類を元の場所へすぐに戻せるように台帳を作成するなどといったことも大事です。また、水害に対してはデータの消失を防ぐために、電源設備やPC、書類などは上層階に置くなども重要です。火山灰などの被害からも守るためには、重要なデータはメディアに保存し、遠隔地の強固な保管庫で安全に保管する、などがあります。自社だけで対策を立てるのは大変なので、外部の専門家を活用することが有効です。
 パンデミックの発生に関しては、それぞれの感染症や広がりの度合いによって、具体的な対策は異なってきます。症状が治まってから何日出社禁止なのか、マスク着用や消毒程度で出社可能なのか等です。しかし、まだ社会としての経験値が少ないため、行政機関や社会インフラ系の企業がいったいどういう対策をとるか読みづらい面もあるため、具体的な想定がしづらい面もあります。そのため、まずは優先して継続する業務が何かを見極めておくことが重要です。そのうえで、従業員の何割が出られない状況なのか、パターンごとに対策案を練る必要があります。

表1 災害と主な対策事項

(3)BCPの見直し

 事業を守るための「BCP」の策定は必須。前編で述べたとおり、今では多くの企業がBCPを作っています。しかし、地震だけを想定した”よくあるBCP”ではなく、あらゆる災害を想定したBCPである必要があります。またBCPは、業種、業態などにより対策も全く異なります。1か月程業務が止まっても大丈夫な会社もあれば、すぐにでも動かなければいけない、あるいはむしろ災害時にこそ期待される組織もあります。さらには部門部署によっても異なります。自社の業務を見直し、あらゆることを想定して対策を練ることが大事です。
 BCPを検討する際に、どの企業、組織でも共通して検討すべきことは次の3つです。1.何を残したいか。(優先順位を考える)2.想定される被害はどれくらいか。3.被害の期間はどれくらいか、です。それぞれの災害を想定し上記3つを検討することは、一旦、自社を見つめ直すことにもつながります。今一度、自社のBCPを見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

 2019年9月9日に発生した台風15号、その約1ヶ月後の10月12日に上陸した台風19号、その約2週間後の10月25日に発生した豪雨。いずれも千葉県が立て続けに被害にあっています。台風19号の際には同日の10月12日午後6時22分に千葉県南東沖を震源として、最大震度4の地震が発生しました。そして同時刻には、千葉県に台風がかなり接近しており、この地震が大規模なものであったらさらなる被害がもたらされていたかもしれません。幸いにも地震による被害はほとんどありませんでしたが、台風上陸と同時に大きい地震が起きる可能性も少なくないということが示された事例でした。
 今回のこの現状を受け、改めて、どういった災害が起こりうるのか、起こった場合どうなることが想定されうるか、そして、万が一災害が起こった場合にしっかり対処できるような体制になっているのか。これらを問題提起すべく、今回のテーマとなりました。いざというときは人命優先です。だからこそ、企業の資産、しかし軽視されがちな”情報”を“あらかじめ”護る、ことが重要です。それが事業の継続につながり、ひいては社会的機能の維持につながります。
 災害大国といわれる日本だからこそ、追求していかなければいけないこと。それは、「持続可能」な社会の実現。それぞれが危機感を持ち、あらかじめ準備しておくことで、安全・安心な社会を作ることができるはずです。

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