データ復旧の専門業者に聞く!その作業の裏側とは!?~大切なデータを守るために重要なこと~

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あなたの大切なデータは何ですか。実はその大切なデータ、一瞬で消えてしまうこともあります。スマホで撮影した家族写真、スマホに入っている個人情報など、必ずしも、ずっと安全に持っていられる保証はありません。

今回、インタビューを受けてくださる方は株式会社ブレイディアの宇田さん。スマホやPCのデータ復旧を専門とするお店「SMART FIX」を運営している会社で、宇田さんは、いわゆる”スマホのお医者さん”。2015年よりデータ復旧事業をスタートさせ、今ではその技術は国内トップともいえるほど。iPhoneより難しいといわれるAndroidのデータ復旧も得意とします。そのデータ復旧率の高さから、宇田さんたちは駆け込み寺のような存在にもなっています。

意外にも身近にあるスマホのトラブル。そのようなトラブルから大切なデータを守るためにはどうしたらいいのでしょうか?今回、宇田さんに詳しく話を伺いました。

1.データがなくなるその瞬間は、以外と身近に潜んでいる!?

藤田彩香(以下、藤田):私自身、まだデータ復旧サービスを利用したことはないのですが、いったいどういう方が、どういうデータの復旧を依頼することが多いのでしょうか。お金をかけでまで復旧してほしいデータなので、よほど重要なものでしょうね。

宇田祐介(株式会社ブレイディア事業部長。以下、宇田):そうですね。やはり、”pricelessなデータ”である想い出の写真を復元させてほしいという依頼が半分以上です。特に、お子さまの写真や新婚旅行の写真、家族旅行の写真などです。一生に一度しか撮れないものですからね。なので依頼に来る方は、20代後半~30代女性が多いですね。そういえば、新婚旅行の写真を夫のスマホで撮影しており、戻ってきて数日後たまたまそのスマホが壊れてしまい、妻が怒っているのでどうしても復旧させてほしいという依頼もありました(笑)。あとはPCに入っている仕事のデータですかね。特に大学の研究機関の方や企業の営業の方、個人事業主さんが多いです。

藤田:それほど大事なデータなのに、どうして消えてしまうのでしょう?原因は何なのでしょうか。

宇田:原因は様々ですが、主なものは水没や落下、突如起動しなくなる、などでしょうか。
 特にこの時期(秋)は台風シーズン。大雨、暴風によるスマホの水濡れや損壊も少なくありません。一方で夏のシーズンはというと、海やプールでの水没、そしてフェスなどのレジャーでの水濡れが多いです。ポケットに携帯が入っていることを忘れてそのまま海に入ってしまったとか、防水ケースに入れていたけど動かなくなってしまったとかです。ちなみに防水機能のついたスマホや防水用のケースが売られているのを多く見受けられますが、皆さんが思うほど保護力は高くないんです。防水の仕組みは、単に水が入らないようにできるだけ密閉状態に近づけているだけで、中身の機械部分は相変わらず濡れたらアウトです。宇宙服ほどの密閉性でもない限り液体は必ず入ってきます。信頼しすぎるのも良くないですね。それと雨の中でのフェスにも要注意!ポケットに入れていたスマホが水濡れしてしまったり、撮影のためにスマホを取り出したがためにスマホが濡れてしまい動かなくなってしまったという例もあります。
 あとは、ポケットに携帯を入れたまま洗濯機にかけてしまったなどもあります(笑)。普通に生活していても、以外に身近に起こるトラブルばかりですね。
 今の時代、家に固定電話もないので連絡手段はスマホだけ、という方が多いです。その唯一の連絡手段が消えてしまったら、それはパニックですよね。それでこのお店に駆けつけてくる方も多くいらっしゃいます。

2.データ復旧の現状。顕微鏡を使っても見えないものを修理する!?

藤田:では、実際にデータ復旧の作業についてお話を聞きたいと思います。主な事例はあるものの、壊れる原因は千差万別。スマホもたくさん種類がありますし、それだけ復旧パターンも多種多様ですよね。それだけの復旧をどのようにカバーしているのでしょうか。

宇田:おっしゃる通り!iPhoneは、iPhone11も含めて20数種類しかないのですが、Androidは無数です。それだけAndroidのデータ復旧は複雑で難しいので、Androidのデータ復旧を扱っている業者さんはほとんどなく、弊社は貴重な存在となっています。さらにスマホは毎年のように技術進歩があります。日々勉強していないとそのスピードに追い付いていけません。その点弊社は常に最先端を追求しているので、新しいデバイスでも対応できることは強みだと思います。
 データ復旧に関してですが、特に難しいのは突如壊れ、起動しなくなった場合です。基板のどこが壊れているか調べないといけないのですが、基板にはなんと何百個もの小さいチップがついています。このチップは小さすぎてどこが悪いか目視では分かりません。顕微鏡を使ってもチップの損傷は分からないです。したがってテスターを使って回路の異常値を調べる必要がありますが、一つ一つ調べるのはとても大変、途方に暮れてしまいます。そこで重要となるのが知識と経験。どのような症状で起動しなくなったかを伺い、それでどのチップが壊れているのかをある程度予測するんです。故障パターンによって傾向がわかるので。

ちなみに、PCでいうとSurfaceや最新のMacは特にデータ復旧が難しい。昔のPCは厚い分簡単に分解でき、HDD(データが入っているパーツ)を取り出してそこから直接データを復元すればいいのですが、Surfaceなどの新しいデバイスは軽量で薄い分、そもそも分解が難しく、HDDやSSDを取り出すのも一苦労です。さらに新しいモデルはSSDが基板に直接実装されていて、そもそも取り外せない仕様になっています。そのため旧来の復旧技術は役に立ちません。
 一方HDDはもう数十年経っており、構造は今も変わっていません。ほぼ技術的には完成しているので復旧は比較的簡単です。

藤田:HDDという言葉も出てきましたが、最近では高速なため、SSDも増えてきております。データの復旧作業に何か違いはありますか?

宇田:HDDもSSDも取り出せるので、そこから復旧をすればよいという点は共通です。一方で取り外すことができないオンボードSSDというのがあるのですが、これはデータ復旧がとても難しい。デバイスをより薄く、軽くするために登場してきた技術ですが、今後このようなSSDを使うデバイスが増えていくでしょうね。もちろん、弊社ではこのような最先端技術も復旧可能です。
 話を戻しまして、HDDとSSDですが、やはり上記で述べた通り、HDDは比較的復旧しやすいですね。カバーを外し基板や磁気ヘッド、モーターなどの故障部分を修理します。HDDの仕組みはCDと一緒で、中で実際にディスクが回っています。したがって衝撃に弱く、壊れやすいのが弱点。突如動かなくなることだってあります。一方でSSDは強い。壊れにくいです。振ったって落としたって大丈夫。ただ、故障時のデータ復旧が難しいですね。HDDと異なり、どこが故障しているかを目で見ることはできないので。やはり目視できないものを復旧させるのは相当な技術が必要です。

3.データの喪失を防ぐために

藤田:データ復旧は決して簡単ではなく、自分では到底できないということですね。“スマホのお医者さん”がいるのは本当に心強い。でもやはり、一番はお医者さんにかからないこと。そもそもデータを喪失しないことですね。その予防策は何でしょうか。

宇田:やはり、データのバックアップは大事ですね。皆さん、大切なデータがあるにも関わらずバックアップを取っていないことが多いです。トラブルになってから、無くなったことの大変さを知るのではなく、必ず事前に準備をしておきましょう。
 ところで、バックアップの基本。“321ルール”はご存じでしょうか。ここまでやればほぼ完璧、というバックアップ方法です。「3」箇所にバックアップを取る。少なくとも「2」種類の媒体に保存。バックアップのうち「1」つは違う場所に保管する、というルールです。このように保存することで、記憶媒体に不具合が生じたり、バックアップファイルがサイバー攻撃を受けたり、災害で保管場所に立ち入ることができなくなったとしても、データ復旧が可能な状態を維持することができます。でもここまでしっかりやるのはちょっと面倒、という方でも、少なくともiCloudやGoogleフォトなどにバックアップを取っておくことは大切です。が、しかし!そのようなクラウドでのバックアップも大事ですが、ボウラインさんがやっているAmberlt、あれの個人版を早く出してくれたらなぁと思います(笑)。クラウドも万全ではないので。
 バックアップ以外に気を付けることといえば、たとえば充電器は純正のものを使う、とかですかね。実は、100均などで販売されているような充電器を使用しているとスマホバッテリーが弱くなってしまいます。流れている電流が不安定だったり、これらをコントロールする回路が組み込まれていないためです。スマホの寿命を縮めてしまうので気を付けてくださいね。

藤田:そうですね。しかし、どれだけ気を付けてもデータ喪失の可能性はゼロではないと思います。万が一トラブルが起こった場合の対処方などありますでしょうか?

宇田:おっしゃる通り、残念ながらデータ喪失はゼロにはなりません。普段からバックアップを取っている人でも突然の故障には対処できません。バックアップができていなかった直近1週間のデータを復旧してほしいという依頼もあります。
 万が一スマホがおかしくなってしまった場合には、無理に自分で直そうとするのではなく、すぐにプロの専門業者さんに持って行くのが一番です。たとえば水没した場合は、すぐに電源を切ってその後は触らないようにしましょう。無理に再起動させようとすると、回路がショートしてしまい中の基板が余計に壊れてしまうこともあります。ネットで調べると、水没したら米櫃やシリカゲルの中に入れるとよいなど書かれていることもありますが、これは全く意味がありません。そもそも乾燥させるための対処法だと思いますが、乾燥するのに1週間くらいかかりますから。それとデータ復旧アプリを使うと良いという話もありますが、こちらも信用しないでください。データ復旧アプリを使ってしまったがために逆にデータがなくなってしまった、というお客様もいます。

藤田:なるほど、やはり壊れてしまったら自分でなんとかしようとせず、プロの専門業者さんを訪ねるのが一番ですね!本日はお忙しい中貴重なお時間をありがとうございました。

まとめ

スマホやPCが壊れた時、メーカーに修理を依頼すると、初期化されてしまうので必ずデータはなくなります。「メーカーはモノとしての価値しか扱わない。だから、ここの店を求めてやってくる。弊社はお金に換えられない“価値”を扱っています。」と誇らしげに語った宇田さん。たしかに、想い出の写真や友達の連絡先、個人情報などはとっても大切なデータです。身近にありすぎて粗末に扱ってしまいがちなスマホですが、実は一番守らなければならない”価値”が入っています。

まずはバックアップなどをとって自分で守ること。万が一スマホのトラブルが起こってしまった場合には、自分でなんとかしようとせず信頼できる専門業者さんに持っていくこと。とても基本的なことですが、意外とできていない方も多いようです。

価値あるデータを守る、その重要性を改めて認識させられる取材でした。

【編集後記】
今回の取材日は2019年10月8日だったのですが、その週末、過去最大級ともいわれる台風19号が発生しました。日本は災害大国です。“データを守る”と言っても様々なリスクが潜んでいます。どうしても守り切れない状況も出てくるでしょう。そんなとき、こういうサービスがあるといいですね。

【インタビュアー】
藤田彩香(ふじたあやか)
データ保全推進研究会事務局 株式会社ボウラインマネジメント所属 企業・団体における業務効率化をサポート。主に文書・映像、IoTデータ等の活用・管理支援、データマネジメント支援サービス、データ保全サービス Amberlt(アンバルト)、文書管理系サービスの普及支援などを行っている。

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