長期化する情報資産の保存期間。いま求められるデータの「保全」(後編)

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前編では、組織にとって重要な情報資産である「デジタルデータ」について、長期保存が求められている背景についてお話しました。 しかし、ただ保存すればいいのでしょうか?いいえ、保存期間が長期化しているからこそ、配慮すべき問題があるのです。

1.保存だけでなく「保全」が必要

保存したデータは絶対に文字化けしないのでしょうか、保管した状態でいつでも取り出せるのでしょうか。 信頼度99.999・・・と9がたくさん並んでも100%を保証することはできないでしょう。 石に情報を刻んだとしても破壊や紛失はあり得ます。証拠性保全や真正性などほんとうに可能なのでしょうか?

記録媒体は製造者が媒体寿命を公表しています。長期保存のために媒体寿命が尽きる前に新たな媒体にデータを引き継ぐ作業が必要です。 JIS規格(Z6019)*1で規定されているように、同一データを2つ以上の記録メディアで保存するような策も重要です。
一方、デジタルファイルは一部の損傷で全体を読み取れなくなることもあり、また媒体自体も破壊や盗難リスクにさらされています。 100%保証は不可能でも、業務を怠っていなかったことや悪い風評の拡大を抑えるために、データ所有者である企業や担当者がお客様や裁判所などに対してどのようなデータ保存策をとっていたのかを説明できることが重要です。 従って、保存データの検索・取出しにはITが重要ですが、長期保存方法は明確に説明できること、すなわちアナログ手法を主体とした保存方法に利点があります。

技術革新によりデータの保存媒体は変化し続けるでしょう。 その時代の最適手法を常に取り入れ、誰に対しても安全・安心を説明できる保存手法であること、それが「データ保全」と言えるでしょう。 データを長期間保全する手間やコストは決して小さくないのです。
*1)JIS規格(Z6019):「磁気テープによるデジタル情報の長期保存方法」に関する規格。デジタル情報を長期保存するため方法を規定する規格として2018年1月に制定された。

2.生(なま)データの保全策が必要

データの長期保存策は、保存価値があると考えられるデータのみを抽出してから保存するのが最も経済的な手法です。建設業界の工事データも現場で発生する大量データの中から竣工データに限定し、さらにコンプライアンスに準拠したものを抽出して保管しています。
しかしこの抽出作業というのが曲者で、この抽出作業に専門性と人件費がかなりかかると課題になっています。また、クレームや訴訟時に正当な工事をしたことを証明できるデータとしては心もとない、と現場責任者などは不安に感じています。

そこで最近では、一つの工事で発生した写真、映像を含むすべてのデジタルデータをそのまま保存し、必要な時に用途に合わせて、必要なデータだけを速やかに取り出すことができる、そのようなデータ保全方法が求められるようになってきました。 建設工事だけでなく様々な業務で同様な傾向が見られます。また将来、今想定する保存価値以外にも新たなデータ利用価値が創造されないとも限りません。今想定する保存価値だけで保存対象を選別するのは難しいのです。

しかも厄介なのが、あらゆる機器のデジタル化や、SNSに代表される各種ITサービスの普及、さらに、IoT(モノのインターネット)の拡大によって、情報が世の中に生まれる速度が今よりもっと加速し、種類も多様化することが確実なことです。 例えば、近年の実用化が期待される「自動運転自動車」は、各種センサーが1秒間に1Gバイトものデータを生成すると言われます。 もちろん、1台あたりです。「医療業界」でも、DNAデータを採取する装置の一般化と低価格化とともに、全人類の医療データを収集しようとの動きも急速に盛り上がっています。

3.利用を意識した保全方法が必要

医療の現場では、電子カルテデータが長期保全されています。
ただ電子カルテの出力データだけを保全しておいても使えない、とある医師は言います。 保全データの利用時にはカルテ情報だけでなく、その患者のある時期の検査、治療、投薬など全情報が必要になるからだそうです。

手術の映像記録も大手大学病院などで行われています。
しかし一つの病院だけでも複数の手術室で数時間の手術が毎日のように実施されています。 見たいシーンがあるとき、膨大な記録量の中からどのように探したらよいでしょうか。 執刀した先生ならば時刻だけで探せるかもしれませんが、5年、10年後に第三者はどのように検索したらよいのでしょうか。

製造業の現場などでは、デジタルデータだけでなく各種レポートに手書きのメモやスケッチ、プリント写真などの付帯資料が添えられることも多くなりました。 そんな過去のデータも、その資産を有効に活用することを考慮してデジタル化されますが、活用したいときに探し出せなければ使うことができません。

企業活動によって得られた全(生:なま)データの長期保全は、今後の事業成長はもちろん、訴訟対策などのためにも欠かせなくなっています。 データを長期保全する技術だけでなく、“必要な時に必要なデータを取り出せる技術”の開発も急務となっているのです。

まとめ

さて、前編と後編にわたり、「デジタルデータの保全」についてお話ししました。 保存期間が長期化しているからこそ、確実に「保全」すること、また、未来において利用できるために「必要な時に必要なデータを探し出せる」ということが、鍵となるのです。 あなたの組織は大丈夫でしょうか?

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